「青春レトロピア」ごあいさつ
未来から吹き荒れる強風を背中に浴びながら、幾ばくか壊れやすい過去をじっと見つめ、(過去からの突風を待ちながら)未来のほうへ後足で漸進する。21世紀を生き延びるための存在戦略「青春レトロピア」は、僕が提示しうる理念的テーゼのひとつです。
現在を見渡せば、1995年制作の大友克洋『MEMORIES』よろしく、救難信号を受けた宇宙船「コロナ」が「彼女の想いで」に惑わされ、風邪薬と新薬を間違えて飲んだ製薬会社の男が「最臭兵器」となって死の臭気をまき散らし、「大砲の街」ではどこと戦争をしているかわからないまま「敵移動都市」に向け砲撃が続けられる。手短に言えば、ホログラムと生物兵器とグローバリズムの進展を背景に、個人の努力と力量では解決不能な困難に巻き込まれる「われわれが生きている現実」が描かれています。
20世紀半ばにベンヤミンが絶筆「歴史哲学テーゼ」に託したのは、天使が過去の瓦礫を積み上げながら否応なしに突風に舞い上がり未来の方向へ押し流される救済のイメージでしたが、21世紀のはじまりにバウマンが遺作「Retrotopia」で記したのは、歴史の天使は未来の方向に翻りつつあり、未来の地獄から過去の楽園に向かって吹きつける強風に押し戻されるという応答でした。
もちろん、昨今の加速主義はうまくいかず、人類は退歩するだろうことを思えば、画家が願わくば、未来から吹き荒れる強風を背中に浴びながら、幾ばくか壊れやすい過去をじっと見つめ、(過去からの突風を待ちながら)未来のほうへ後足で漸進する、生存のために存在を放棄しない「青春レトロピア」に賭けるほかないように思うわけです。もちろん「失われた対象から自分自身をうまく切り離すということ、客観的に見て対象が失われたとき、それを諦めることが鬱病の主体にはできないのである」といったフロイト精神分析的な批判もあれど、本当に危ういのは(集団的に)喪失を喪失することです。喪失を抱える(集団的)主体は、記憶による情動的補給なしには-破滅的永遠に回帰する-情動的暴走が疑われてならないのです。社会が病んでいるのであれば、ひとが宗教であれ、恋愛であれ、仕事であれ、なんらかの幻想に病的に逃避することは健全な反応で、茹でガエルになりながらも、別の水たまりに飛び込むことを望むのだとすれば、「ひとは反復によって慰み、回顧によって救済されうる」ほかありません。
もう一度だけ(別の仕方で)反復すれば、グリニッジ標準時の社会的浸透により生活世界が水平化され、ひとびとが固有のリズムを失ってから、ひとの記憶と人格は引き裂かれることになりました。近代生活の基礎となった時間技術は、群集心理と凡庸な悪を生み出す根源となったのです。エーリッヒ・フロムを思い出せば、「多数の人が同意するという事実によって、愚行が賢明な行動に、虚構が現実になる。この広がる愚行には、完全な孤立や分離といった感覚がない。そのため進歩的な社会で経験する強烈な不安を感じずにすむ。大半の人にとって、理性や現実とは世論にすぎない」のであり、その解脱は時間芸術による人格と記憶の再総合にあると僕は思うのです。
そんなわけで、個人が抱える「ノスタルジア」が集団的「レトロトピア」に-量が質に転化する-時代を生き抜くために、あなたの天使が「青春レトロピア」の嵐の中にあらんことを、記憶と人格と時間意識の和解の成就を祈るばかりです。
2023年1月吉日
はるか彼方から
僕の展示を
応援してくれる
思想家のみなさん
祈りに似たポエジーは、
祈りよりもポエジーよりもすぐれている。
シオランさん
carpe diem.
ホラティウスさん
ソクラテスさん「じゃあぼくたちは、
祭りのあとに来たというわけか」
プラトンさん(代筆)
作家略歴
■プロフィール/略歴 スズキナルヒロ
1990年静岡県生まれ。中央大学文学部哲学科卒業。
自画像作家。絵と文章をかくひと。
垂直性/水平性/ノスタルジー/アニマルが主題。
事後的な愛や青春が事前的に開示される作品群を制作中。
合言葉は「覆水を盆に返す」で、
作為的/独善的に時のちからを悪用し、
鑑賞者の(本当は実在しない)過去/歴史にあった
強い思考や強い感情を伝達することを目論んでいる。
2012 GEISAI#16 #17
2013 GEISAI#18 審査員賞ノミネート
2014 個展「感情のごたまぜ」@デザインフェスタギャラリー
2017 ゲンロンカオス*ラウンジ新芸術校3期「完全なる仮説」展
2018 同 最終成果展 津田大介審査員特別賞
2020 個展「反復と回顧/愛と青春のごたまぜ」
@さくらテラス五反田
展示の様子
★ログインボーナス
展示は終了しました。
ご来場いただいたみなさん、
一緒に酒を飲み、わけのわからない話を語り、
謎の哲学話を聞いてくれた常連のみなさん、
そして、Bar PEACEさん、
ありがとうございました。
こうした場所があることで、はじめて東京を知った気がします。
開催日程:2023年2月27日(月)~3月24日(金)
営業時間:PM19:00-AM0:00 日曜・祝日休み
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-9-3
ホテルロイヤルオーク1F 「Bar PEACE」さん
※展示を見に来られた方は、お店に入るときに
「展示を見に来ました」と声をおかけください。
よろしくお願いいたします。
展示を見に来られた方は
ワンドリンクオーダーお願いします。
最小金額 ドリンク800円+チャージ500円
協力: CHICA, GOTANDA GALLERY, Bar PEACE
開催概要